2014年03月20日

「制度外」の取り組みを会議室ではなく、現場の実践から生み出すために(「スピンオフ京都」の復習2)

絡み手2 尾瀬順次さん(NPO法人てくてく)のお話から

 今回のスピンオフ京都のタイトルにもある通り、僕は「逃げる」方法として「もうひとつ」を選択してきました。それはたとえば「制度」が僕と、僕の大切な人を非人間的な管理下に置こうとしている時には「もうひとつ」として「制度外」を求め実践し、「一緒に逃げていく」ということです。もちろん「もうひとつ」は「制度外」に限らないのですが、ここでは「制度外」にこだわってみます。
 僕は「ばおばぶ」をはじめる時、それは四半世紀前のことですが、最初から「制度外」で行ってきました。将来において(つまりそれは現在ということなのですが)、障害を持つ人たちが、地域生活という耳障りのいいスローガンのもと、制度という鎖をつけられて、管理下に置かれることが容易に予測されていたからです。その時に人間性を奪われないためには「制度外」という「もうひとつ」を持つことが必要だと考えたからです。
 現在でも変わらずに、「ばおばぶ」は制度にとらわれないで事業を行っています。それが無理なく可能なのは、もともと僕らが障害者総合支援法のような制度とは、まるで無関係な事業所だからなのでしょう。形が制度外なので、違和感なく制度にとらわれない事業を行えているわけです。しかし現在の日本において、僕らのような形の事業所は少数派です。ほとんどすべてが障害者総合支援法という制度の事業所なのです。ところが、その一方で、少しずつですが「制度だけでは足りない」ということに気がつく事業所が現れてきています。
 僕の気になるテーマのひとつは、ここにあります。
 「ばおばぶ」のように制度外の事業所が制度にとらわれない事業をすることは簡単です。しかし制度に則った事業所が制度にとらわれない事業を行うというのは、そう簡単なことではない。障害を持つ人たちにとってこれから必要となってくる、制度にとらわれない取り組みを、圧倒的に多数である制度事業所が行うには、どのようにしたらよいのか? それは可能なことなのか?

 尾瀬さんは僕と同じように、生活に関わる福祉が未成熟だったころからやってきている人です。お話しの中でも、当時の無認可で法人格を持たずにやっていた頃のことが語られていました。その後、尾瀬さんは法人格を持つ事業所に実践の場を持ち、現在は障害者総合支援法の事業をしています。
 尾瀬さんがいらっしゃる「てくてく」さんは共同生活介護、共同生活援助、居宅介護、重度訪問介護、行動援護、移動支援、短期入所など、生活に関わる全般に取り組んでいる事業所です。そして「てくてく」さんも、制度だけでは足りないことに気付いているのでしょう。
 「制度の枠にとらわれない自由な発想で活動を展開しています!
 案内のリーフレットに書かれていた言葉です。
 この「制度の枠にとらわれない」ということについて、尾瀬さんはあの頃の実践から体感として理解しているのではないかと思います。しかし「てくてく」さんの若い世代のスタッフさんや、日本中の制度事業所に勤めている人たちには、そんなに深い実感はないのだろうと思われます。
 彼らは、どのように「制度の枠にとらわれない」を実現していくのでしょう。
 それは「制度」が作られるのと同じような、会議室での議論によるものではないはずです。私見ですが「制度の枠にとらわれない」は、現場での実践の積み重ねによってしか実現されないのだろうと思います。「てくてく」さんのリーフレットに書かれた言葉の後半にある「自由な発想で活動を展開」という一文。「制度の枠にとらわれない」は「自由」と結びついているのですから。
 もし「制度外」を会議室で作ったなら、それはたとえば「制度外の生活支援」というあらたな「制度」でしかない。程度区分、時間単位、基準単価、等々の「管理」という「自由」の対極にある手法によって行われるのです。
 しかし残念なことに、支援費制度以降しか知らない世代の人たちは、会議室で作られる福祉制度しか知らない場合がほとんどです。その人たちが、どのように現場での自由な実践から制度外を産み出して行けるのか? そう考えると、尾瀬さんのようにその体験を持った人たちが制度事業の領域にいることに、とても大きな意味があるように思えます。
 会議室ではなく、現場で大切な事を産み出していくこと。その大切さと、そのダイナミズムを、支援費以降の世代とともにもう一度体験していくことが、これから大切なことなのだろうと思います。

 会議室で作られて上から下りてくる「制度」だけではいけない。
 現場で日々向かい合い、同じ時間を過ごしている利用者さんと事業者の関わりの中から、自分たちならではの「制度外」を産み出し、共有する豊かさ。
 その方法を、僕らはもっと考え、実践していかなければならないのでしょう。
 とりわけ、まだ生活に関わる福祉が不毛だった時代に、本気で障害を持つ人たちの方を向き、本当に自由に、その人にとって大切な一つひとつを実践してきた人たちには、その期待が大きくあるのだと思います。

※『NPO法人 てくてく』さんのホームページは下記の通りです。
http://www15.ocn.ne.jp/~tekuteku/
posted by 五十嵐正人 at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | スピンオフ企画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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